ノーダルポイントの設定方法【一眼レフカメラでのパノラマ撮影には必須です】

ノーダルポイントの設定方法【一眼レフカメラでのパノラマ撮影には必須です】

『ノーダルポイント』とは、カメラの角度をずらして撮影しても視差のずれが生じないポイントのことをいいます。

360度カメラを使用せずに、一眼レフカメラなどでパノラマ撮影をするときにはこの設定が必要となってきます。

どのような作業をするかと言いますと、雲台の回転軸の中心に対するカメラの前後の位置を調整する作業です。

例えば、顔の前で指を立ててみてください。その指を両目で見た場合と右目だけで見た場合、左目だけで見た場合とでは、奥の風景に対して指の位置がずれて見えます。このように見えるのは視差のずれが生じているためです。

カメラでもこれと同じ現象が起こります。

例として、次の二つの画像を見比べてみてください。

まずはノーダルポイントを意識しないで撮影した場合です。

重なり具合が分かりやすいように拡大しています。

次にノーダルポイントを意識して撮影した場合です。

重なり具合が分かりやすいように拡大しています。

奥にあるクローゼットのドアの隙間と、手前の鉛筆の重なり方が違うのがお分かりかと思います。

二枚目の画像できれいに重なって見えるのは、視差のずれが生じていないためです。

これらの写真はカメラや鉛筆の位置は変えずに、雲台のみを回転させて、左斜め30度・正面・右斜め30度の角度で撮影しています。

変更点は、カメラの前後の位置だけです。

この設定をきちんと行うことでキレイなパノラマ写真を作れるようになります。

カメラをただ単純に回転させて撮影するだけでは視差がずれてしまい、後の合成作業が難しくなります。また、つなぎ目のずれたパノラマ写真になってしまうこともあります。

ノーダルポイントを一度合わせると、雲台をバラしたり、カメラやレンズの種類を変更しない限り再度設定する必要はありません。

それでは実際に合わせていきましょう。

このような順番で説明していきます。

この方法はあくまでも一例となります。お手持ちのカメラや雲台によっては設定が多少異なってくるかもしれませんので、参考程度になればと思います。

まずは、各ステップに共通する注意事項です。

  • カメラのシャッターはレリーズで切ってください(ブレさせずに撮影することで精度が高まります)
  • 雲台は水平を維持してください。
  • ターゲットやカメラの位置決めの確認は、実際に撮影した写真を拡大再生して行ってください(ファインダーやプレビュー画面での表示と、実際に撮影した写真とでは、若干のずれがある場合があります)

Step1 : カメラとレンズの設定を行う

はじめに、カメラとレンズの設定を行います。

レンズは対角魚眼レンズ、または円周魚眼レンズをご使用ください。

今回は対角魚眼レンズを使用しています。

私は以下の設定で行いましたが、これらが絶対ではありません。他に良い設定があればぜひそちらで行ってください。

  • レンズは無限遠(∞)に設定。
  • 撮影モードはマニュアル(M)に設定。
  • 手ぶれ補正機能はオフに(三脚撮影時に手ぶれ補正機能をオンにしていると逆にブレることがあります)
  • 絞り値(F値)は、F8。
  • 明るさに関する設定は、撮影環境に合わせて設定してください(ターゲットやカメラの位置調整は、実際に撮影した写真を見ながら行っていきます。後から見て確認しやすい写真を撮るようにしてください)
  • カメラのモニターにはグリッド線を表示させてください(グリッド線を基準にすることで、ターゲットやカメラの位置を調整しやすくなります)
  • カメラとレンズの種類を控えておいてください(カメラやレンズの種類を変更するとノーダルポイントが変わることがあります)

Step2 : 雲台の回転軸の中心とレンズの中心を合わせる

雲台の回転軸の中心と、撮影した写真の中心が一致するように調整していきます。

今回使用している雲台は、『Nodal Ninja(ノーダルニンジャ)』というパノラマ雲台です。

雲台にセットしたカメラを真下に向け、スライダーを移動させながら、雲台の回転軸の中心とカメラモニターのグリッド線の中心が一致するように調整します。

位置決めの確認は、実際に撮影した写真を拡大再生して行ってください。ファインダーやプレビュー画面での表示と、実際に撮影した写真とでは、若干のずれがある場合があります。

レリーズでシャッターを切ることもお忘れなく。ブレさせずに撮影することを心がけてください。

位置が確定したら、スライダーをストッパーで固定したり、メモリの値を控えておいてください(雲台を分解しても設定を復元しやすくなります)

Step3 : 二つのターゲットとカメラを一直線に並べる

二つのターゲットと、カメラモニターのグリッド線の縦軸の中心線が、全て重なるように並べます。

今回は、「クローゼットのドアの隙間」「鉛筆(最細部である先端を基準にしています)」の二つをターゲットとします。ターゲットは何でも構わないのですが、できれば細長いものがお勧めです。

クローゼットのドアの隙間を奥側のターゲット、鉛筆を手前側のターゲットとします。

このとき、カメラに対して奥側のターゲットは遠く、手前側のターゲットは近くになるように配置してください。そうすることで精度が高まります(被写界深度の関係らしいです)

まずは、奥側のターゲットであるクローゼットのドアの隙間と、グリッド線の縦軸の中心線が重なるようにカメラを配置します。

カメラの位置を調整をするときは、雲台は回転させずに三脚ごと移動させて行ってください。

後から雲台を左右に水平回転させてノーダルポイントを合わせていきますので、このときの雲台の角度が0度(正面)になるようにしておきます。

次に、手前側のターゲットである鉛筆を、カメラとクローゼットのドアの隙間の間に置きます。

鉛筆の最細部である先端がグリッド線の縦軸の中心線と重なるように鉛筆の位置を微調整してください。

撮影した写真を見て、二つのターゲットとグリッド線、これら三つがぴたりと重なっていればこのステップは終了です。

Step4 : カメラを左右に振り、ターゲット同士の重なりがずれない位置を見つける

カメラを左右に振って撮影し、ターゲット同士の重なりがずれない位置を見つけます。

雲台を水平回転させて、左斜め30度・右斜め30度の角度で撮影を行います。

必ずしも30度である必要はありませんが、左右同じ角度で撮影を行ってください。

次に、ターゲット同士の重なりがずれない位置をカメラを前後に動かしながら見つけていきます。

次のようにずれている場合はカメラを後ろに動かしてください(手前側のターゲットが奥側のターゲットに対して内側にずれている)

次のようにずれている場合はカメラを前に動かしてください(手前側のターゲットが奥側のターゲットに対して外側にずれている)

確認は必ず、実際に撮影した写真を拡大再生して行ってください。

どの角度で撮影しても、ターゲット同士の重なりがずれないようになれば、ノーダルポイントの設定は完了です。

カメラの位置が確定したら、スライダーをストッパーで固定したり、メモリの値を控えておいてください(雲台を分解しても設定を復元しやすくなります)

三脚の高さはノーダルポイントに関係しません。実際にパノラマ撮影を行うときは、設定の際の高さと違っていてもノーダルポイントが変わることはありません。

実際にパノラマ撮影を行うときは、設定の際に調整した角度でなくてもノーダルポイントが変わることはありません(今回の設定では左右30度で調整を行いましたが、実際の撮影では30度でなくてもOKです)

肝心なのは、雲台の回転軸の中心に対するカメラの前後の位置です。

カメラやレンズの種類を変更したときは、これまでと同じ手順で再度設定を行ってください(カメラやレンズの種類を変更するとノーダルポイントが変わることがあります)

ここまでノーダルポイントの設定方法について説明してきましたが、この方法はあくまでも一例です(基本的な内容は共通しています)。

いろいろと試してみて、ご自身に合ったやり方を見つけてみてください。

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